X たゆまぬ進歩――1975〜80年
[1974−75年45回転盤発表曲]
恋するイタリアーノ ITALIANO (74)
初恋のトトーシュ TOTOCHE (74)
待ってくださいマドモアゼル MADEMOISELLE
ATTENDEZ
出発 PARTIR (75)
POUR ECRIRE JE T’AIME (75)
[アルバム『アダモ"ライヴ"74』(日本盤のみ)]
A1 オープニング〜ブルージーンと皮ジャンパー
OPENING-EN BLUE JEANS ET BLOUSON D'CUIR
2 初恋のトトーシュ TOTOCHE
3 月のバラ ROSE DE LUNE
4 サン・トワ・マミー SANS TOI
MAMIE
5 くたばれサンバ SAMBA (FICHUE SAMBA)
6 アムール・アムール AMOUR AMOUR
7 待って下さい、マドモアゼル MADEMOISELLE ATTENDEZ
8 フェアリー・テイル FAIRY TALE
B1 インシャラー INCH' ALLAH
2 ユリコ YURIKO
3 恋の終り TU T'EN VAS
4 心のままに SI LE COEUR T'EN DIT
5 海のマリー MARIE LA MER
6 雪が降る TOMBE LA NAIGE
7 ヘイ・ジュテーム MON CINEMA
アルバム『夢の世界』を1973年12月に発表した後、次のアルバム『セ・マ・ヴィ』が1975年11月に発表される約2年間の間にフランスでは四枚の45回転盤が発売されている。
イダルゴ HIDALGO/愛の発見 DE ME SAVOIR
AIMDE TOI (74)
恋するイタリアーノ ITALIANO /初恋のトトーシュ TOTOCHE (74/6)
待ってくださいマドモアゼル MADEMOISELLE
ATTENDEZ/ 出発 PARTIR (75/1)
セ・マ・ヴィ C'EST MA VIE/POUR ECRIRE
JE T’AIME (75/5)
この四枚のうち、一枚目はアルバム『夢の世界』からのカット。四枚目のA面は次のアルバム『セ・マ・ヴィ』に収められることになる。それ以外の五曲はいずれも優れた作品で、これらについて解説する。
恋するイタリアーノ ITALIANO
力感と興奮度の高い作品で、同じテーマで空回りしていた「イダルゴ」における問題は完全に克服されている。「だが、もちろん作品が優れていてもこのような作品にいつも大衆の想像力が追いつくとは限らない」と言いたかったところだが、この曲は本国でもヒットした。非常に精力的なアダモの気質がわかる作品でもある。(この曲は盤によって、エコーが強くかかったように聞こえるものとそうでないものとがある。日本盤は後者で、こちらの方が聴きやすい。)
初恋のトトーシュ TOTOCHE
この作品はシングル盤のB面という位置がハマリ過ぎと思われるくらい、控えめな美しさを備えた曲で、優美で、1967年頃の夏のアダモを思い返させる。アダモのように、可憐なもの、愛らしいものへの賛美を決して忘れないのが、本来の芸術家の意識のはずではなかったのか。それに比べ、他の現代ポピュラー音楽はなんという泥沼にはまっていることだろう。『アダモ”ライヴ"74』でも、スタジオ盤とほぼ同等の良い歌唱・演奏を聴くことができる。
待ってくださいマドモアゼル MADEMOISELLE
ATTENDEZ
先行発売シングル「恋するイタリアーノ」と好対照をなすシングル盤のA面曲で、前者が力感があるとするならば、こちらはスムーズさがある。「イタリアーノ」同様いつものアダモらしい男性の立場からの詩だが、音楽自体はとても可憐で、まだ幼さの残る若い女性のイメージが湧くという人もいるだろう。私には、非常に若いカップルや子供たちのイメージが近いとも感ぜられる。可憐さにおいて「初恋のトトーシュ」のアップ・テンポ版という言い方もできるかもしれない。
出発 PARTIR
これも「初恋のトトーシュ」同様、シングル盤B面に非常にふさわしい曲想をもつ佳曲。先の三曲に比べ、力感が先行している。特にコーラスからコーラスへの移行部でこの作品の価値はわかる。
POUR ECRIRE JE T’AIME
フランス盤シングル”C’EST MA VIE”のB面に収められた作品で、メロディー自体は決して豊富ではないが、深い情念をもった佳曲である。
[74年の日本盤ライヴでの先行発売曲]
また、次の四曲はフランスでスタジオ録音盤が発表される前に、イン・ジャパンのライヴ・アルバム『アダモ“ライヴ”74』に収録されたものである。スタジオ盤ができる前にステージ上で新曲が発表されるというケースはアダモの場合珍しいことではないが、この四曲はたまたまライヴ盤に収録されたと考えるべきであろう。ただし、このアルバムは収録時間を欲張ったために音質こそ優秀とは言い難いものの、アレンジ、マイク・セッティングともに洗練され、収録曲はオリジナリティーにとんでいる。また「心のままに」や「恋の終り」(「君は去りゆく」)なども新しいアレンジがほどこされ、生まれ変わっている。このアルバムはイン・ジャパンとしては異例の素晴らしい出来映えである。そのため、ここではこの時点での新発表曲とニュー・アレンジ曲を中心に紹介したい。
A1 オープニング〜ブルージーンと皮ジャンパー
OPENING−EN BLUE JEANS ET BLOUSON D’CUIR
アダモがこの頃やりたかったこの曲への趣向がよく分かるテイクで、前年の「ブルージーン'73」よりもずっと良いできである。
2 初恋のトトーシュ TOTOCHE
ライヴ・アルバムの2曲目にふさわしく、これから再現される音楽の世界の導入になっている。
A3 月のバラ ROSE DE LUNE
のちにアルバム「アダモ〜オランピア77」に別テイクが収録されるが、こちらの方が優れている。こうしたブルース調のリズムはアダモがあまり得意とはしていないもので、彼の才能が本質的に旋律志向で、単にリズムに乗ってゆくような個性ではないことを物語っている。とはいえ、この曲は、うまくのめり込めば(または頭の中で音楽を想像している限りは)非常に興奮度の高い音楽である。曲想は感情にまかせて展開し、しかも潤いと夢を失わない。いわば、想像上の傑作。
A4 サン・トワ・マミー SANS TOI MAMIE
歌い馴れた、ある意味すでに歌い尽くされた曲であったはずだが、このスロー・テンポ・ヴァージョンは、アダモの成熟した大人の感性が十二分に活かされている。特に、"Au
nom des joies"からの歌いこみ方などは素晴らしい。私はこの名曲の最高のテイクの一つとしてこれを支持している。もちろん、「新しい ありません、ごめんなさい」という最初のフレーズは、曲の質を少しも損なうものではない。
A5 くたばれサンバ SAMBA (FICHUE SAMBA)
この曲のスタジオ盤はアダモCBS移籍後第一作のオリジナル・フランス盤"VOYAGE JUSQU'A TOI”(日本では『アダモ(愛はルシアン』にこの曲が「愛の苦しみ」と入れ替わっていること、および「アムール・アムール」がA面最後に足されている事を除けば同じ内容)の最後に入っている。『アダモ“ライヴ”’74』では、このアルバムの独特の雰囲気にマッチしている。
A6 アムール・アムール AMOUR AMOUR
「二人のロマン」と同系列の曲調を持つ作品で、このアルバムのシンプルなアレンジとスロー・テンポのために比較的小規模の、おとなしい仕上がりになっている。美しく堂々とした、ときには非常に感動的な曲だが、それでも特筆するほどの要素は、良い面でも悪い面でもない。
A7 待ってくださいマドモアゼル MADEMOISELLE
ATTENDEZ
B1 インシャラー INCH' ALLAH
B2 ユリコ YURIKO
B5 海のマリー MARIE LA MER
B6 雪が降る TOMBE LA NAIGE(日本語)
このコンサートのアレンジはこれらの作品に非常に合っている。スタジオ盤同様、可愛らしい出来映え、または幻想的な仕上げになっている。いずれも多少スロー・テンポになっているが、曲の魅力を減じるものではない。「待って下さい、マドモアゼル」では、この新曲の最初を日本語で歌い、訪れた国のファンへの心遣いが感じられる。
A8 フェアリ・ーテイル FAIRY TALE
次のアルバムでタイトル・ソング(“JUSQU'A LAMOUR”=「愛にとどくまで」)となる作品で、詳しくは次章を参照。このヴァージョンは曲の仕上がりとしては多少漠としており、アダモの創意が完全に再現されるまでには次のスタジオ・アルバムを待たなければならなかった。詳しくはそちらの解説を参照されたい。
B3 恋の終り TU T'EN VAS
この作品の新しいアレンジである。前のものほどの枯淡な緊張はないが、歌唱には工夫がなされ、これはこれで良いテイクである。ただし最後の大音量の伴奏はよく真意がしれない。
B4 心のままに SI LE COEUR T'EN DIT
「エフ・コム・ファム」のところで、この曲の二つのテイクがいかに異なる美しさを持っているかについて書いたが、このテイクもスタジオ盤と比べ、それに近いところがある。
B7 ヘイ・ジュテーム MON CINEMA
この作品はもともとどこかライヴに適した効果が期待できる作品らしく、特に最初にエレキ・ギターが音楽の推進力を担当するところ、最後でのキー・ボードのメロディー部分など、ライヴ盤でスタジオ盤とは違った効果を生んでいる場合が多い。このヴァージョンもその一つである。
このアルバムは美しい効果と、緊張感はないがアット・ホームであたたかい雰囲気を持つ優れた「ライヴ・イン・ジャパン」アルバムであり、この種の作品中出色の出来映えである。
|